地域ブランド・資源循環・食品産業

和歌山は流行が3年遅い。それなのに資源循環では、周回遅れで先頭にいた

商品では先行、仕組みでは周回遅れ。横浜の行政プラットフォームと和歌山の既存事例を比べます。

横浜のオレンジ果皮ビールと和歌山の未利用資源活用を比較するイメージ
横浜の都市型アップサイクルと、みかん・梅・発酵素材がある和歌山の資源循環を対比したイメージ。実在するホテル、商品、醸造所を再現したものではありません。

和歌山には、流行が少し遅れてやってくる。

もちろん、本当にすべての流行が3年遅れるわけではない。それでも和歌山で暮らしていると、都会で見たものが忘れた頃にやってくる、と感じる場面は少なくない。ここでいう「3年遅い」は、和歌山で暮らす筆者の実感を込めた、地域的な自虐表現である。

東京や大阪で話題になった店が、数年後に和歌山へ進出する。都市部で普及したサービスや働き方が、忘れた頃に「新しい取組」として紹介される。

不動産やITの世界には、海外や大都市で成功した事業モデルを、まだ普及していない地域へ持ち込む「タイムマシン経営」という考え方がある。

それが同じ国内でも成立するのが、和歌山である。

都会で何が流行り、何が失敗したかを見てから導入できる。遅れていることは、必ずしも悪いことばかりではない。後から始める分、失敗を避け、完成度を高められる可能性もある。

では、資源循環はどうだろう。

2026年7月、横浜市は、ホテルの朝食で使われたオレンジの果皮と、ビール醸造後のホップを再利用したクラフトビールの開発を発表した。

先進的な都市らしい取組である。

また横浜に先を越された。

そう思って調べてみると、話は少し違っていた。

和歌山では、その数か月前から、有田みかんの果汁と果皮を使ったクラフトエールが販売されていた。

さらに調べると、みかんジュースの搾りかすは牛の飼料になり、梅酢は鶏肉や卵のブランド化に使われ、梅の種からはデザートが作られていた。

和歌山は、本当に資源循環でも遅れているのだろうか。

それとも、気付かないうちに周回遅れで先頭に立っていたのだろうか。

横浜では、ホテル朝食のオレンジの皮がビールになった

横浜市が2026年7月22日に発表したのは、横浜ベイホテル東急と地元ブルワリー「REVO BREWING」の連携によるクラフトビールである。

ホテルでオレンジジュースを提供した後に残る果皮と、ビール醸造で一度使われたホップを加工した「再生ホップ」を原料としている。

両者がつながるきっかけになったのが、横浜市資源循環推進プラットフォーム、通称「YRCプラットフォーム」だった。

この事例で重要なのは、珍しいビールが一本できたことだけではない。

ホテルは、毎日の営業で果皮を排出する。

ブルワリーは、地域性のある新しい商品を探している。

市内には、運搬や再資源化を担う事業者もいる。

しかし、それぞれの事業者が、自力で最適な相手を探し出せるとは限らない。

果皮を出すホテルが、クラフトビールの醸造会社へ突然電話をかけて、「うちのオレンジの皮を使いませんか」と提案することは、あまり現実的ではない。

そこで、行政やプラットフォームが間に入る。

捨てる側と使う側をつなぎ、商談や実証のきっかけを作る。

横浜の事例は、おおむね次のような流れで理解できる。

図表1 横浜の資源循環フロー
  1. 横浜ベイホテル東急朝食でオレンジジュースを提供
  2. 果皮を分別・提供ほかのものと混ざらない形で次の工程へ
  3. YRCプラットフォーム資源を出す側と活用する側を接続
  4. REVO BREWING再生ホップと合わせてレシピを設計・醸造
  5. 地域商品として販売・発信市民や観光客が手に取れる形へ

横浜市の発表で確認できる範囲を模式化。保管・運搬・費用負担など、公表されていない詳細は含めていません。

横浜市は、同プラットフォームを通じて、資源循環に関心を持つ企業や団体の交流、商談、新規事業の創出を進めている。

2026年2月には、資源循環をテーマにしたビジネスネットワーキングも開催し、企業間の情報交換や自由商談の場を設けている。

つまり、横浜市がクラフトビールのレシピを作ったわけではない。

行政が担ったのは、商品を作ることではなく、商品が生まれる関係を作ることである。

ただし、横浜の取組をまだ「成功事業」とは呼べない

行政の発表を見ると、資源が地域内で循環する新たな取組として、非常に分かりやすく紹介されている。

ホテル、地元ブルワリー、自治体。

登場人物も明確で、物語にしやすい。

観光客にとっても、ホテル朝食で出たオレンジの皮が、街のクラフトビールになるという説明は理解しやすい。

しかし、商品が開発されたことと、事業として成立したことは同じではない。

現時点で横浜市が公表している情報からは、少なくとも次の点が確認できない。

  • オレンジ果皮を何キログラム使用したのか
  • 何本のビールを製造したのか
  • 販売価格はいくらか
  • 果皮の保管や運搬を誰が担ったのか
  • 試作費や物流費を誰が負担したのか
  • 売上や利益がどれほど見込まれるのか
  • 商品を継続して製造するのか
  • 廃棄物や二酸化炭素をどの程度削減できるのか

横浜市の発表で確認できるのは、クラフトビールが開発され、プラットフォームによる接続が契機になったという点までである。

商品化は成果である。

しかし、販売実績や採算性が分からない段階で、「成功した資源循環事業」と断定するのは早い。

資源循環の取組は、行政の記者発表が出た瞬間に完成するわけではない。

翌年も原料が回収され、商品が作られ、補助や広報がなくても売れ続けて、初めて事業として自走したと言える。

横浜の本当の成果は、これから確認されることになる。

ところが和歌山では、みかんの皮はもうビールになっていた

横浜の発表より前の2026年2月20日から、和歌山県産有田みかんの果汁と果皮を使った「和歌山県産有田みかんクラフトエール」が順次販売されている。

販売場所は、イオンなど近畿圏のスーパーマーケットを中心とした全国の小売店である。

この商品は、三菱UFJ銀行を中心に、複数の企業が連携して開発された。

流行が遅れてくるはずの和歌山で、横浜より先にみかんの果皮がクラフトビールになっていた。

しかも、和歌山には別のみかんエールもある。

有田市の伊藤農園が販売する「WAKAYAMA MIKAN ALE」は、和歌山県産のみかんと八朔を使用し、有田川町のCAMPS有田川が製造している。

原材料には麦芽、ホップ、みかん、八朔が使われ、350ミリリットル、アルコール分5.5%の発泡酒として現在も販売されている。

つまり、「和歌山でもみかんを使ったクラフトビールを作れるのか」という問いには、すでに答えが出ている。

作れる。

しかも、県産柑橘を使い、県内で醸造する体制も存在する。

和歌山に必要なのは、三本目、四本目のみかんビールを作ることではないのかもしれない。

横浜と和歌山の違いは、商品の有無ではなく、その商品が生まれる仕組みにある。

横浜は地域内でつなぎ、和歌山は企業連携で全国へ売った

横浜の事例と有田みかんクラフトエールは、同じように見えて性格が違う。

横浜で使われたのは、ホテルの営業で発生するオレンジ果皮である。

量は大規模な加工工場ほど多くないと考えられるが、「ホテル朝食の果皮」という物語は強い。

発生場所、商品を作るブルワリー、販売される街が、横浜という一つの都市の中に収まりやすい。

一方、有田みかんクラフトエールは、県産農産物と大手企業の販売網を組み合わせた広域型の商品である。

全国の小売店で販売できれば、商品の販売規模は大きくなる。

ただし、原料が和歌山県産でも、製造、流通、販売を含めた利益のうち、どの程度が和歌山県内に残るのかは別に検証する必要がある。

横浜は、小さくても地域内の循環が見えやすい。

和歌山は、地域外の企業と組み、大きな販路へ商品を乗せる力がある。

どちらが優れているという単純な話ではない。

比較すべきなのは、次の点である。

  • 原料をどれだけ安定して使えるか
  • 回収や前処理にいくらかかるか
  • 商品が継続的に売れるか
  • 地域にどれだけ利益が残るか
  • 現地を訪れる理由になるか
  • 次の事業者連携へつながるか

横浜は循環を見せるのがうまく、和歌山は商品を作るのが先だった。

図表2 横浜と和歌山の比較
項目横浜和歌山
主な原料ホテル朝食のオレンジ果皮、再生ホップ規格外みかん、果皮、梅酢、醤油かすなど
接続方法行政プラットフォーム個別企業・研究機関・行政施策
商品化新規開発事例複数の既存事例
販売地域内消費と相性がよい全国流通の事例もある
強み循環の構造が見えやすい原料と既存技術が豊富
課題採算・継続性が未確認事例が点在し、入口が見えにくい

和歌山は「捨てている県」ではなかった

みかんの皮をビールにした事例だけを見ていると、資源循環とは、廃棄物をおしゃれな食品へ変えることのように見える。

しかし、和歌山の既存事例を調べると、もっと地味で、もっと大きな循環がすでに存在している。

その代表が「紀州和華牛」である。

紀州和華牛は、みかんジュースかすや醤油かすなど、和歌山県内で発生する副産物を利用した飼料で育てられる黒毛和牛だ。

和歌山県畜産試験場が2015年度から2017年度にかけて生産技術を研究し、2019年にブランド牛としてデビューした。

認定条件には、県産副産物を1割以上使った飼料を給与することが含まれている。現在は県内外で販売されている。

クラフトビールは話題になりやすい。

写真映えもするし、限定商品としてニュースにもなりやすい。

しかし、資源循環として見れば、毎年継続して牛の飼料に使われる仕組みの方が、利用量も安定性も大きい可能性がある。

副産物を人が食べる商品へ戻すことだけが、高度な資源利用ではない。

飼料や肥料として安定的に利用され、地域の生産物へ変わるのであれば、それも十分に価値のある循環である。

梅酢は、鶏肉と卵になっていた

和歌山を代表する梅産業でも、副産物の活用は以前から行われている。

梅干しの加工過程で生じる梅酢は、塩分が高く、そのまま大量に利用することが難しい。

和歌山県の研究では、脱塩・濃縮した梅酢を飼料に加え、鶏の生産性や品質への効果を検証してきた。

この技術を利用して生産された鶏肉と鶏卵は、「紀州うめどり」「紀州うめたまご」として販売されている。

ここで重要なのは、梅酢を使った商品を思いついたことではない。

高い塩分という障壁を越えるため、前処理技術を開発した点にある。

未利用資源の商品化では、派手なアイデアより先に、保存、塩分、におい、衛生、運搬といった地味な問題を解決しなければならない。

梅酢を飼料へ変えた事例は、資源循環が単なる発想コンテストではないことを示している。

梅の種は、デザートになった

田辺市では、通常は廃棄される梅の種の中にある「仁」を使った「みんなの梅仁豆腐365」が商品化されている。

開発したのは、田辺市のフレンチレストラン「キャラバンサライ」である。

梅の仁が持つ香りを生かしたデザートで、梅の殻は製造後に堆肥化され、農業へ還元されている。

種を割る作業の一部は就労支援団体に委託されており、食品廃棄物の削減だけでなく、地域内の仕事にもつながっている。

利用する原料の量だけを見れば、牛の飼料ほど大きくないだろう。

しかし、梅の種という和歌山らしい素材を、高単価の地域商品へ変え、雇用や農業への還元まで組み込んでいる。

量を使う循環と、価値を高める循環。

どちらか一方に絞る必要はない。

原料の性質や発生量に応じて、最も適した利用方法を選べばよい。

醤油かすと酒かすは、観光体験になろうとしている

2026年度、那智勝浦町では、酒かすや醤油かすなどの副産物を使った発酵スイーツを開発し、製造見学や発酵体験と組み合わせる事業が採択された。

商店街の空き店舗を改修し、地域の醸造会社と連携してバウムクーヘンなどを製造・販売する。

さらに、製造工程の見学や発酵体験イベントを実施し、商品そのものを観光コンテンツへ広げる計画である。

これは、今回の横浜事例から和歌山への応用を考えるうえで、かなり重要な先行例である。

副産物を菓子にするだけなら、商品開発で終わる。

その製造過程を見学できるようにし、地域の発酵文化と結びつけ、旅行者が現地で買えるようにすれば、資源循環は観光体験になる。

和歌山に資源循環がないわけではない。

みかんはビールや牛へ。

梅酢は鶏肉と卵へ。

梅の種はデザートへ。

醤油かすや酒かすは、発酵スイーツと観光体験へ向かっている。

和歌山は「捨てている県」ではなかった。

周回遅れで先頭にいた。でも、誰も気付いていない

では、和歌山は資源循環の先進県なのか。

そこまで言うのは、まだ早い。

個別の商品や技術を見ると、和歌山には横浜より先行している事例がある。

しかし、それらは地域や業界ごとに点在している。

有田ではみかん。

みなべ・田辺では梅。

湯浅では醤油。

那智勝浦では酒造や水産加工。

串本では水産物。

山間部では紀州材や備長炭。

それぞれの地域に原料があり、事業者がいて、研究や商品化の実績もある。

ところが、県民や観光客から見ると、それらが一つの資源循環として見えない。

紀州和華牛を食べても、みかんジュースかすや醤油かすが使われていることを知らない人は多い。

梅を使った商品を買っても、どの副産物が、どの工程で、何に変わったのかまでは分からない。

資源循環が行われているのに、循環しているように見えない。

これが和歌山の弱点ではないか。

商品はある。でも、入口がない

事業者側から見ても、状況は似ている。

たとえば、ホテルが朝食で出る果物の皮を活用したいと考えたとする。

誰へ相談すればよいのか。

食品加工会社か。

廃棄物処理会社か。

農林水産部門か。

商工担当か。

保健所か。

観光部門か。

県内には商品開発を支援する研究機関や補助制度、商談会が存在する。

しかし、余っている原料と、それを必要とする事業者を一つの窓口でつなぐ仕組みは、少なくとも横浜のYRCプラットフォームほど分かりやすく見えていない。

和歌山県も、この課題を認識し始めている。

2026年度には、県内で発生する未利用果実について、活用が見込める分野を抽出し、企業へのヒアリングを行い、今後のマッチングにつなげる「未利用果実等利活用に係る実需調査」を開始した。

委託上限額は490万円で、活用条件や課題を整理することが業務内容に含まれている。

つまり、和歌山県もようやく、個別の商品開発だけでなく、需要側を探し、事業者同士をつなぐ段階へ進もうとしている。

もっとも、調査を行うことと、継続的なマッチング機能を持つことは別である。

報告書を作って終わるのか。

実際の商談、試作、物流、販売まで追いかけるのか。

ここで差がつく。

無料の皮ほど、高くつく

未利用資源を使った商品は、原料費が安いように見える。

捨てる予定だった果皮なら、無料でもらえるのではないか。

そう考えたくなる。

しかし、現場はそれほど甘くない。

果皮を食品原料として使うには、ほかのごみと混ざらないよう分別しなければならない。

必要に応じて洗浄し、袋や専用容器へ入れ、腐敗を防ぐため冷蔵や冷凍を行う。

一定量がたまるまで保管し、加工場所まで運ぶ必要もある。

発生量が少なければ、小口回収の物流費が高くなる。

原料そのものが無料でも、

  • 分別する人件費
  • 保管容器
  • 冷蔵・冷凍費
  • 運搬費
  • 前処理費
  • 成分検査費
  • 試作費
  • 品質管理費

が発生する。

図表3 副産物の商品化コスト

原料が無料でも、商品は安くならない。分別や保存、小口物流、検査など、通常原料にはない費用が加わる場合があります。

場合によっては、通常の原料を購入した方が安い。

未利用資源の商品化で本当に必要なのは、「捨てるものを使う」という善意ではない。

追加コストを上回る価格で、消費者が買いたくなる商品を作ることである。

物語を選ぶならホテル、量を選ぶなら加工場

ホテル朝食から出る果皮には、分かりやすい物語がある。

朝食で飲んだオレンジジュースの皮が、夜には地域のクラフトビールになる。

旅行者にも説明しやすい。

一方で、一つのホテルから出る果皮の量には限界がある。

日によって宿泊客数も変わる。

大量生産には向かない可能性がある。

ジュース工場や梅加工場なら、一定の時期にまとまった量の残渣が発生する。

事業として原料を確保しやすい。

ただし、「工場の搾りかす」と聞いても、ホテル朝食ほど華やかな物語にはなりにくい。

物語を優先するならホテル。

量と効率を優先するなら加工場。

どちらが正しいのではない。

限定商品ならホテル。

継続的な飼料や加工原料なら工場。

目的によって原料の集め方を分ける必要がある。

環境にいいだけでは、二回目は売れない

資源循環の商品には、つい「環境にいいから買ってください」という説明が付きやすい。

しかし、消費者が一度は応援で買ってくれても、おいしくなければ二度目はない。

価格が高すぎても続かない。

販売場所が分からなければ、観光客は買えない。

資源循環は購入理由の一つにはなるが、商品そのものの魅力を代替するものではない。

必要なのは、

  • おいしさ
  • 品質
  • 適正な価格
  • 分かりやすいデザイン
  • 和歌山らしい物語
  • 買いやすい販売場所
  • 持ち帰りやすさ
  • 再購入できるECや小売網

である。

さらに事業として評価するなら、廃棄物を何キログラム減らしたかだけでは足りない。

売上はいくらか。

粗利は出たか。

県内事業者へいくら支払われたか。

新たな雇用は生まれたか。

観光客が現地でいくら使ったか。

翌年も続いたか。

二回目も購入されたか。

ここまで測って初めて、資源循環が地域産業になったと言える。

和歌山で次にやるなら、県全体ではなく地域ごと

和歌山県全域の未利用資源を、一つの巨大な事業で回そうとすると、おそらく失敗する。

県土は広く、原料の発生場所も季節も違う。

有田のみかん果皮を勝浦まで運び、勝浦の魚の骨を高野山へ運ぶような仕組みは、物流費と環境負荷が大きい。

地域ごとに、小さな循環を作る方が現実的である。

図表4 和歌山の地域別資源循環モデル
地域主な資源活用・提案
有田・海南みかん、果皮、搾汁残渣飲料、菓子、香り商品、農園・工場見学
みなべ・田辺・白浜梅酢、梅種、梅酒残渣食品、香り、温浴、宿泊体験
湯浅醤油かす、もろみ菓子、パン、発酵体験
那智勝浦酒かす、醤油かす、水産副産物発酵スイーツ、見学、観光商品
串本未利用魚、水産加工残渣缶詰、だし、教育旅行
高野山食品残渣、米ぬか、紀州材堆肥、木製備品、循環型宿坊体験

既存事例と本文の提案を地域別に整理したもの。すべてが実施済みという意味ではありません。

有田・海南では、みかんを一度で終わらせない

有田・海南地域には、農園、選果場、ジュース加工会社、菓子事業者、醸造事業者、道の駅、観光農園がある。

すでにみかんエールも存在する。

次に必要なのは、新しいビールをもう一本作ることではない。

一つのみかんを、どこまで使えるかを見せることである。

規格外みかんを搾汁する。

果汁はジュースや酒類へ。

果皮の一部は菓子や飲料、香り商品へ。

食品に向かない部分は飼料や肥料へ。

完成した商品を道の駅、ホテル、駅、観光施設で販売する。

商品に付けた二次元コードから、農園見学や搾汁工場の見学を予約できるようにする。

商品を買った人が、次は産地を訪れる。

産地を訪れた人が、別の商品を買う。

ここまでつながれば、みかんの果皮は単なる原料ではなく、観光客を動かす入口になる。

みなべ・田辺・白浜では、梅を滞在体験へ変える

みなべ・田辺には、梅加工会社、研究機関、梅林、酒造会社がある。

隣接する白浜には、ホテル、温泉、空港、観光客がいる。

梅酢や梅の種、梅酒製造後の梅、酒かすを、土産品だけで終わらせず、宿泊中の体験へ組み込めないだろうか。

ホテル朝食で梅酢を使った調味料を提供する。

梅の種を使った香り商品を客室へ置く。

梅酒製造後の梅を菓子にする。

酒かすや梅由来素材を温浴やウェルネス体験へつなげる。

翌日は梅林や加工場を訪ねる。

梅はすでに有名である。

足りないのは、梅干しを買って帰る以外の消費導線である。

湯浅・那智勝浦では、発酵を見せる

湯浅には醤油蔵と歴史的な町並みがある。

那智勝浦には酒造、醤油醸造、水産加工、宿泊、熊野観光がある。

醤油かすや酒かすを使った菓子を作るだけでは、ほかの地域でもできる。

蔵を見学し、発酵の歴史を知り、製造工程を体験し、そこでしか買えない商品を持ち帰る。

資源循環を地域文化の説明に使えば、単なるエコ商品から観光コンテンツへ変わる。

那智勝浦で始まる発酵スイーツと見学体験の事業は、その可能性を検証する先行例になる。

行政は、商品を作るな。組合せを作れ

行政が資源循環を進めようとすると、補助金を出して新商品を作る方向へ進みやすい。

しかし、商品が完成した時点で事業が終了すると、その後の販売や継続性が置き去りになる。

担当者が異動し、補助金が終われば、取組も止まる。

行政が作るべきなのは、次のクラフトビールではない。

次のクラフトビールが自然に生まれる市場である。

そのためには、少なくとも次の機能が必要になる。

未利用資源の情報を集める

  • 何が発生するのか
  • どこで発生するのか
  • 年間どれだけ出るのか
  • どの時期に集中するのか
  • 現在は何に使われているのか
  • 保存や運搬は可能か

利用したい事業者を探す

食品会社だけではない。

飲料、飼料、肥料、化粧品、建材、宿泊、観光など、用途を広く探す必要がある。

小規模な実証を支える

  • 原料サンプルの提供
  • 試作
  • 成分検査
  • 法規制の確認
  • 運搬テスト
  • 販売テスト

販路を先に確保する

商品を作ってから売り場を探すのでは遅い。

ホテル、道の駅、駅、空港、地元スーパー、観光施設など、最初に買う場所を先に決める。

売上まで追いかける

商品化件数だけで評価しない。

売上、粗利、地域内調達額、再購入率、継続年数まで確認する。

和歌山県が始めた未利用果実の実需調査は、この方向へ進む第一歩である。

ただし、本当に必要なのは調査報告書ではない。

その後に、事業者をつなぎ、試作を動かし、販売し、数字を検証する運営者である。

和歌山は遅れていたのではない。バラバラに先を走っていた

横浜では、ホテル朝食のオレンジの皮がクラフトビールになった。

それは、都市の中で事業者をつなぎ、資源循環を市民や観光客に見える商品へ変えた、分かりやすい取組である。

一方、和歌山では、その発表より先に、みかんの果汁と果皮を使ったクラフトエールが販売されていた。

さらに、みかんジュースかすや醤油かすは牛を育て、梅酢は鶏肉と卵を生み、梅の種はデザートになり、酒かすや醤油かすは観光体験へ向かっている。

和歌山は、未利用資源を活用する技術や商品で、必ずしも遅れてはいなかった。

むしろ、一部では先を走っていた。

ただし、その走者たちは別々のコースを走っている。

県民にも観光客にも、全体像が見えない。

原料を出す事業者にも、活用したい事業者にも、分かりやすい入口がない。

商品では先行していても、事業者をつなぎ、循環を見せ、観光や地域消費へ広げる仕組みでは遅れている。

横浜から和歌山が学ぶべきなのは、オレンジの皮をビールに変える技術ではない。

すでにある原料と、すでにある技術と、すでにいる事業者をつなぎ、「飲める」「買える」「訪ねられる」形にすることである。

流行が3年遅れてくるなら、先行地域の取組をそのままコピーしてはいけない。

三年分の成功と失敗を見たうえで、さらに一段進んだ仕組みを作らなければ、ただ遅れているだけで終わる。

和歌山が本当に周回遅れで先頭に立てるかどうか。

それを決めるのは、次にどんな商品を作るかではない。

次の商品が、何度でも自然に生まれる仕組みを作れるかである。

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この記事は2026年7月24日時点で確認できた公開情報を基に作成しています。商品、事業、制度の内容は変更される可能性があります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。