COOL WAKAYAMA考察

人口減少を止めるのか、減っても暮らせる街をつくるのか――和歌山市長選6候補の公約を検証

和歌山市長選6候補の公約を、人口・産業・交通・観光・財政から検証する

抽象化した和歌山市の都市景観と、同じ大きさの六つの選択肢を表した政策比較のイメージ
和歌山市の都市課題と、等しい六つの選択肢を表したイメージ。

2026年8月2日、和歌山市長選挙が告示された。

立候補したのは、届け出順に、おざき 太郎氏、浜田 しんすけ氏、芝本 かずき氏、タビタ 卓宗氏、かたぎり 章浩氏、幸前 そら氏の6人。投開票は8月9日に行われる。

今回の選挙では、3期12年続いた尾花正啓市政を引き継ぐのか、それとも市政の方向を変えるのかが問われる。

ただ、候補者の経歴や公約を順番に並べるだけでは、この選挙の意味は見えてこない。

和歌山市では人口減少と高齢化が進んでいる。若年層は進学や就職を機に大阪や東京へ流出し、住宅取得や子育ての年代では、岩出市や海南市など近隣自治体への転出も起きている。

路線バスの維持は難しくなり、道路、橋、上下水道、学校、公共施設の更新費も増えていく。

一方で、観光客や宿泊客は回復し、南海和歌山市駅やJR和歌山駅周辺では、新たなまちづくりの計画も動いている。

次の市長が直面するのは、単純な衰退でも、単純な成長でもない。

人口が減るなかで、どの産業を伸ばし、どの地域へ投資し、どの公共サービスを維持するのか。

今回の市長選は、縮小局面に入った県都をどう経営するかを選ぶ選挙でもある。

本記事では、選挙公報、候補者の公式サイトや政策資料、和歌山市の人口・財政・交通・観光資料を基に、6候補の政策を人口、産業、交通、観光、財政の5分野から検証する。

なお、7月24日に行われた公開討論会の参加者と、告示後の正式な候補者は一致していない。

公開討論会に参加した立候補予定者のうち、実際には立候補しなかった人物がいる一方、正式に立候補した幸前 そら氏は公開討論会に参加していない。

そのため、本記事では公開討論会だけで候補者を横並びにせず、告示後に確定した候補者一覧と選挙公報を優先している。

出典:和歌山市選挙管理委員会「候補者及び選挙事務所一覧表(2026年8月2日17時確定)」和歌山市長選挙「選挙公報」和歌山青年会議所「和歌山市長選挙公開討論会開催のお知らせ」

正式に立候補した6人

和歌山市選挙管理委員会が8月2日午後5時に確定した候補者一覧によると、立候補者は次の6人である。全員が無所属で、タビタ 卓宗氏は元職、残る5人は新人となっている。

候補者年齢区分主な経歴・立場政策の主な方向
おざき 太郎61歳新人元和歌山県議、元県議会議長水辺再生、地場産業、女性支援
浜田 しんすけ64歳新人元和歌山市議企業誘致、駅周辺整備、市政の安定
芝本 かずき58歳新人元和歌山市議会議長地域内経済循環、福祉、行政の見える化
タビタ 卓宗81歳元職元和歌山市長人口50万人、職場倍増、デマンド交通
かたぎり 章浩64歳新人元和歌山県議、元和歌山市議現市政の継承、若者・子育て支援、高齢者支援
幸前 そら25歳新人映像制作会社役員若者の活躍、情報発信、行政の透明化

ここからは、候補者ごとではなく、和歌山市が抱える課題ごとに政策を比較していく。

人口は減っているのに、世帯は減っていない

和歌山市の人口を扱う際には、どの統計を使っているかに注意が必要だ。

住民基本台帳人口と、国勢調査を基準に出生、死亡、転入、転出を反映して算出する推計人口では、数字が異なる。

どちらかが間違っているのではなく、集計方法と目的が違う。

現在の住民登録規模を見る場合は住民基本台帳人口、長期的な人口動態や将来推計を見る場合は、国勢調査基準の人口を使う必要がある。

2026年7月1日現在、住民基本台帳人口は34万7,647人・17万7,663世帯、国勢調査基準人口は33万8,949人・15万9,788世帯である。本記事では、この二つを同じ統計として扱わない。

和歌山市では、人口が減少する一方で、世帯数は横ばい、または増加する傾向が見られる。

背景には、単身世帯や少人数世帯の増加があると考えられる。

これは行政サービスにとって、かなり難しい変化だ。

人口が減れば、税収や公共交通の利用者は減りやすい。

しかし、世帯が細分化し、市域に分散して暮らしていれば、ごみ収集、見守り、買い物支援、道路、水道、住宅、防災などのサービス対象は単純には減らない。

和歌山市の人口問題は、単に「人が少なくなる」という話ではない。

少人数の世帯が広い市域に分散して暮らすなかで、行政サービスをどう維持するかという問題でもある。

出典:和歌山市「令和8年7月1日現在の住民基本台帳による人口・世帯数」和歌山市「令和8年7月1日現在の国勢調査基準人口世帯数」

人口減少の中心は、転出より自然減

候補者の多くは、企業誘致、若者支援、子育て支援、移住・定住などを人口減少対策として掲げている。

若年層や子育て世帯の流出を抑えることは重要だ。

和歌山市では、20代を中心に大阪府や東京都への転出が目立つ。また、25歳から49歳では、岩出市、海南市、紀の川市など近隣自治体への転出も見られる。

つまり、和歌山市では、性質の異なる二つの流出が起きている。

一つは、進学や就職を契機とした大阪・東京方面への若者流出。

もう一つは、住宅取得や子育てを契機とした近隣自治体への生活世帯の流出である。

前者には、魅力ある仕事、所得水準、キャリア形成の機会が必要になる。

後者には、住宅価格、教育、交通、買い物環境、子育て支援など、生活全体の利便性が問われる。

同じ「若者流出対策」でも、必要な政策は異なる。

ただし、和歌山市の人口減少で、より大きな要因となっているのは、転出超過だけではない。

出生数を死亡数が上回る自然減である。

和歌山市の計画資料では、2023年の自然減は3,011人、社会減は240人とされており、同年は自然減が社会減を大きく上回る。

仮に企業誘致などによって転出超過を解消できたとしても、それだけで人口減少全体が止まるとは限らない。

この現実を踏まえると、次の市長には二つの政策が求められる。

一つは、若者や子育て世帯の流出を抑え、社会減を縮小する政策。

もう一つは、高齢化と自然減が続くなかでも、交通、福祉、医療、上下水道、公共施設を維持できる都市へ転換する政策である。

出典:和歌山市「和歌山市人口ビジョン」和歌山市「デジタル田園都市構想推進交付金計画」

6候補の人口減少への処方箋

おざき 太郎氏は、化学、木工、繊維などの地場産業育成、女性の再就職、仕事と家庭の両立、ひとり親支援などを通じて、雇用と生活を支える方向を示している。

浜田 しんすけ氏は、製造業に加え、IT、AI、自動運転、脱炭素関連企業の誘致、教育、子育て、移住・定住などを幅広く掲げる。

芝本 かずき氏は、市内企業への発注、ものづくり人材の育成、地元就職、若者の挑戦を支えることで、地域内に仕事と所得を残そうとしている。

タビタ 卓宗氏は、人口50万人と職場倍増という明確な目標を掲げる。

かたぎり 章浩氏は、選挙公報で、若者が働ける・住みたくなるまち、高齢者や障がい者も住みやすいまち、災害に強いまち、子育て世帯を支援するまちを掲げている。

幸前 そら氏は、若者が活躍し、起業や地域産業の革新に挑戦できる環境づくりを重視している。

方向性には違いがある。

しかし、20代の転出超過を何人減らすのか、市内就職率をどこまで上げるのか、子育て世帯の市外転出をどこまで抑えるのかといった成果指標は、多くの候補で確認できない。

「若者が活躍するまち」や「人口減少を止める」という言葉だけでは、4年後に成果を検証することはできない。

企業を呼ぶのか、地元企業を育てるのか

今回の市長選で比較的分かりやすく表れているのが、経済と雇用をどのようにつくるかという違いである。

大きく分けると、外部から企業や新産業を呼び込む考えと、市内の既存企業や地場産業に資金を循環させる考えがある。

企業誘致を重視する候補

かたぎり 章浩氏は、本人公式政策ページで、海洋資源を生かしたエネルギー産業の創出と、海流発電やメタンハイドレート開発による経済・雇用効果を掲げている。選挙公報では、誘致対象、用地、投資額、雇用目標などの具体像は確認できない。

浜田 しんすけ氏も、製造業に加え、IT、AI、自動運転、脱炭素などの成長分野を挙げる。

タビタ 卓宗氏は、国主導で産業を地方へ分散させる仕組みをつくり、和歌山市へ企業と職場を呼び込む構想を掲げている。

企業誘致が成功すれば、まとまった雇用や設備投資が生まれる可能性がある。

一方で、誘致には工業用地、道路、電力、上下水道、補助金などが必要になる。

進出企業が市外から人材や取引先を連れてくれば、市内への経済効果が限定的になる場合もある。補助期間が終わった後の撤退リスクも考えなければならない。

企業誘致を評価する際には、誘致件数だけでなく、正規雇用者数、平均賃金、地元採用率、地元調達率、補助金一円当たりの経済効果を見る必要がある。

ただ、現時点の公開資料では、対象業種、候補用地、補助額、雇用目標、地元調達率まで具体的に示した候補は確認できない。

地域内経済循環を重視する候補

芝本 かずき氏は「Buyローカル」を掲げ、市の予算や仕事を市内企業や地場産業へ循環させる考えを示している。

ニット産業とGXを組み合わせた高付加価値化や、ものづくり人材の育成・定着も打ち出している。

おざき 太郎氏も、化学、木工、繊維などの既存産業を育て、地元産品の開発やふるさと納税の拡大につなげる方針を示す。

幸前 そら氏は、若者の起業や地域産業の革新という形で、既存産業と新たな担い手を結び付けようとしている。

地域内循環型の政策は、市内事業者へ効果が届きやすい。

ただし、市内企業へ発注するだけでは、市全体の市場規模は大きくならない。

地元企業が市外や海外から売上を獲得し、付加価値と賃金を高められるかが重要になる。

また、市内企業を優先する公共調達は、価格、品質、競争性、公平性との整合も必要だ。

企業誘致と地場産業育成は、どちらか一方を選べばよいものではない。

問題は配分である。

外部企業へどこまで補助金を出すのか。

市内企業の販路開拓や人材育成へ、どこまで投資するのか。

進出企業と地元企業を、どのように取引で結び付けるのか。

今回の公開資料では、この資源配分まで明確に示した候補は見当たらない。

移動できない街をどう変えるか

人口減少と高齢化が進む和歌山市で、公共交通は日々の生活を左右する問題である。

市はこれまで、路線バスへの支援、住民主体の地域バス、加太地区のデマンド型乗合タクシー、自動運転バスの実証などを進めてきた。

つまり、デマンド交通や地域バスという発想自体は、新しいものではない。

候補者の違いは、既存制度をどの地域へ、どの方法で広げるかにある。

かたぎり 章浩氏については、選挙公報・本人公式資料から、公共交通の具体的な運行方式、予約方法、実施年度までは確認できない。

タビタ 卓宗氏は、タクシーのように利用できるミニバスやデマンド交通を掲げる。

おざき 太郎氏は、高齢者の移動手段と地域の支え合いを組み合わせる考えを示す。

浜田 しんすけ氏は、貴志川線の存続や、複数の鉄道駅を拠点としたまちづくりを重視する。

芝本 かずき氏と幸前 そら氏については、主要な公開資料から具体的な運行方式を十分に確認できない。

ただし、予約型交通を導入すれば、それだけで問題が解決するわけではない。

必要なのは、どの地域を対象にするのか、車両を何台用意するのか、年間運行費はいくらか、利用者負担をいくらにするのか、誰が運転するのかという設計である。

特に重要なのは、運転手不足だ。

アプリや配車システムを導入しても、運転する人が確保できなければ運行できない。

また、スマートフォンを使えない高齢者でも、電話や窓口から予約できる仕組みが必要になる。

交通政策は、「新しい交通を導入するか」ではなく、「どの地域で、誰が、いくらで運行するか」まで見なければ評価できない。

出典:和歌山市「和歌山市地域公共交通計画」、候補者の選挙公報・本人公式資料

観光客が増えた後、どこでお金を使ってもらうのか

和歌山市の観光は、コロナ禍からの回復局面に入っている。

宿泊客や外国人観光客が増加しているなかで、次の市長が単に「観光客を増やす」と掲げるだけでは足りない。

問うべきなのは、増えた宿泊客を飲食、買い物、夜間消費、市内周遊へどうつなげるかである。

和歌山市には、和歌山城、和歌浦、雑賀崎加太、友ヶ島などの観光資源がある。

しかし、それぞれが離れており、自動車を使わない旅行者が一度の旅行で周遊するのは簡単ではない。

候補者の政策を見ると、おざき 太郎氏は、内川浄化、和歌川河口周辺の干潟再生、ラムサール条約登録を視野に入れた水辺再生を象徴的な政策として掲げる。

浜田 しんすけ氏は、和歌山城、和歌浦、加太・友ヶ島、食文化など、複数の観光資源を広く対象としている。

かたぎり 章浩氏は、選挙公報で「訪れたくなる和歌山市」を掲げているが、観光を地元企業の商機へつなげる具体的な方法は、選挙公報・本人公式資料では確認できない。

幸前 そら氏は、映像制作に携わった経験を背景に、情報発信やデジタル活用を重視する。

タビタ 卓宗氏は大型の集客構想を掲げるが、費用や実施方法について確認できる情報は限られている。

芝本 かずき氏についても、重点政策資料では、観光の具体策が相対的に少ない。

ここで、「和歌山城か海辺か」という単純な対立をつくるのは適切ではない。

候補者の多くは、観光地ごとの予算配分や優先順位を明示していない。

むしろ問うべきなのは、点在する観光資源を、一つの滞在体験へ変えられるかである。

宿泊施設から和歌山城へ。

和歌山城から中心市街地の飲食店へ。

さらに和歌浦、雑賀崎、加太へ。

こうした移動を可能にする交通と情報の導線が必要になる。

観光政策の成果は、来訪者数だけでなく、観光消費額、平均宿泊数、飲食・小売への波及、市内周遊率によって測るべきだ。

出典:和歌山市「宿泊客数が過去最高を更新!2年連続100万人突破 欧州からの宿泊客数が過去最高を更新」

新しい施設の前に、古いインフラをどうするのか

候補者の公約には、企業誘致、駅周辺整備、室内公園、交通サービス、水辺再生など、新たに始める政策が並んでいる。

しかし、次の市長は、白紙の状態から市政を始めるわけではない。

南海和歌山市駅前南地区では市街地再開発に向けた手続きが進み、JR和歌山駅と友田町周辺でも、県、JR、民間地権者を含む整備が動いている。

和歌山城周辺では文化財調査や観光施策が続き、紀の川を横断する送水管の複線化など、水道インフラの強靱化も進められている。

こうした事業は、市長が交代したからといって、翌日から自由に中止や変更ができるものではない。

都市計画、国や県の補助金、工事契約、民間地権者との調整などが関係しているからだ。

さらに、市の予算の多くは、福祉、教育、人件費、公債費、施設管理など、毎年継続的に必要な支出に充てられる。

新しい政策へ自由に振り向けられる財源は、予算総額ほど大きくない。

道路、橋、学校、公共施設、上下水道は、建設した後も維持費がかかる。

新しい施設を増やすほど、将来の市長と市民が負担する固定費も増える。

ところが、候補者の公開資料では、新しく始める政策は多く示されている一方、廃止、統合、縮小、延期する事業はほとんど示されていない。

今回の市長選で説明が不足しているのは、財源だけではない。

何をやめ、何を後回しにするのかという優先順位である。

出典:和歌山市「和歌山都市計画の変更(和歌山市駅前南地区)」和歌山市「和歌山駅まち空間活性化事業」和歌山市「今後の水道事業及び水道料金について」和歌山市「令和8年度予算と主要事業の概要」和歌山市「公共施設マネジメント」

主要公約の実現可能性をどう見るか

候補者の優劣を、総合点で順位付けすることはしない。

ここでは、主要政策について、対象や期限が明確か、市の権限で実施できるか、既存計画と接続できるか、4年後に成果を検証できるかという観点から整理する。

おざき 太郎氏

内川、和歌川河口、和歌浦湾、干潟、ラムサール条約登録という対象と方向が明確で、他候補との差が分かりやすい。

ふるさと納税の拡大も、成果を数字で確認しやすい政策である。

一方、水辺再生は市だけでは完結しない。

河川や海域の管理、漁業、環境影響、県・国との役割分担が関係する。

事業費、水質改善の目標、実施期限、ラムサール条約登録までの工程が示されれば、実現可能性をより判断しやすくなる。

浜田 しんすけ氏

教育、子育て、福祉、産業、駅、道路、上下水道、観光、農業、DXまで、幅広い分野を掲げている。

市長が担う行政分野を広くカバーし、既存事業との整合性や、市政運営の継続性は見えやすい。

一方、政策範囲が広いため、最優先する事業と、4年間で達成する成果が見えにくい。

新規政策と既存事業の継続を分け、就任後最初の1年で何に着手するのかを示す必要がある。

芝本 かずき氏

Buyローカル、福祉人材の復職、行政・財政の見える化、AI・DXなどは、市の権限で比較的着手しやすい。

市内企業への発注や地域内経済循環という方向も明確である。

一方、市内調達率をどこまで上げるのか、雇用や賃金へどう結び付けるのか、入札の競争性とどう両立するのかは明らかでない。

市内受注率、市内就職率、福祉職への復職者数などの目標が必要になる。

タビタ 卓宗氏

人口50万人、職場倍増という目標は明快で、達成したかどうかも検証しやすい。

しかし、2026年7月1日時点の国勢調査基準人口33万8,949人から50万人へ増やすには、16万1,051人の純増が必要になる。住民基本台帳人口34万7,647人とは別の統計である。

和歌山市の人口が長期的に減少している現状を踏まえると、市の将来人口見通しとの隔たりは大きい。

また、産業を地方へ分散させる国の制度や法律をつくる構想は、市長単独の権限では実現できない。

目標年度、年間の人口増加数、必要な企業数、雇用数、住宅供給、交通、学校、上下水道への追加投資を示さなければ、実現への道筋を判断できない。

かたぎり 章浩氏

選挙公報では、現市政を継承し、活性化を進める姿勢を明確にしている。

若者、高齢者・障がい者、防災、子育て、来訪促進という政策対象も示されている。

かたぎり 章浩氏については、選挙公報・本人公式資料から、公共交通の具体的な運行方式、予約方法、実施年度までは確認できない。

本人公式政策ページで掲げる海洋エネルギー産業についても、用地、事業費、雇用人数、実施工程を確認する必要がある。

幸前 そら氏

若者の活躍、起業、情報発信、デジタル活用、市民参加、透明な行政という方向は明確である。

映像制作会社での経験と、情報発信を重視する政策にも一定の一貫性がある。

市民への情報公開や若者参加は、市の権限で比較的早く着手できる。

ただし、公開資料では理念と実施手段の間に距離がある。

若者の活躍を、起業件数、市内就職率、若年人口、政策形成への参加者数のどれで測るのか。

対象人数、予算、財源、期限も含め、現時点では判断材料が少ない。

公開討論会に参加していないため、交通、財政、インフラ、防災などについて、他候補と同じ質問への回答が得られていない点にも注意が必要だ。

今回の市長選で見える三つの違い

候補者の政策を横断して見ると、少なくとも三つの違いが浮かぶ。

第一は、企業誘致を中心に経済を成長させるのか、地場産業と地域内経済循環を重視するのかという違いである。

第二は、尾花市政と既存事業の継承を重視するのか、新たな象徴政策によって市政の方向を変えるのかという違いである。

第三は、人口の大幅増加を目標にするのか、社会減を抑えながら人口減少へ適応するのかという違いである。

一方で、「和歌山城か海辺か」「観光客か市民生活か」「中心市街地か郊外か」といった単純な対立は、公開資料からは確認できない。

候補者を分かりやすい陣営へ無理に分類すると、実際の政策をゆがめる恐れがある。

また、人口減少下で行政サービスをどこまで維持し、何を統合・縮小するのかについても、候補者間の明確な違いは抽出できなかった。

これは、対立が存在しないというより、公開された政策資料では説明が不足しているということだろう。

公約の数ではなく、優先順位と財源を見る

6候補はいずれも、雇用、子育て、観光、福祉、交通、まちづくりなど、和歌山市が抱える課題への政策を掲げている。

しかし、誰を対象に、いつまでに、いくら使い、何を成果とするのかまでそろった公約は多くない。

特に、財源への言及は全候補を通じて弱い。

有権者が見るべきなのは、公約の数や、言葉の強さだけではない。

その政策は、市長や市の権限で実施できるのか。

すでに市が進めている事業の言い換えではないか。

必要な財源と人材は確保できるのか。

4年後に達成と未達成を判断できるのか。

新しい事業を始める代わりに、何をやめ、何を後回しにするのか。

和歌山市長選は、人口を増やす夢だけを選ぶ選挙ではない。

人口が減り、高齢化が進み、公共施設やインフラが古くなる現実のなかで、何を残し、どこへ投資し、どの暮らしを守るのかを選ぶ選挙でもある。

投開票日は8月9日。

候補者の経歴や印象だけでなく、それぞれが示した処方箋が、和歌山市の現状に本当に対応しているのかを見極めたい。

調査について

本記事は、2026年8月4日時点で確認できた和歌山市選挙管理委員会の候補者一覧・選挙公報、候補者の公式サイト・政策資料、和歌山市の人口統計、人口ビジョン、予算・決算資料、地域公共交通計画、公共施設マネジメント資料、観光統計などを基に作成した。

タビタ 卓宗氏については、確認可能な公式サイト・公式政策ページを確認できなかったため、選挙公報を一次資料として使用した。

候補者本人が明言していない政策、財源、期限、数値目標については推測せず、「確認できない」または「判断材料が少ない」とした。

本記事は、特定の候補者への投票を促すものではなく、公表された政策を比較するための情報提供を目的としている。

参考資料

和歌山市選挙管理委員会「候補者及び選挙事務所一覧表(17時確定)」
和歌山市長選挙「選挙公報」
おざき 太郎氏 公式政策ページ
浜田 しんすけ氏 公式サイト
芝本 かずき氏 公式サイト
かたぎり 章浩氏 公式政策ページ
幸前 そら氏 公式サイト
和歌山市「住民基本台帳による人口・世帯数」
和歌山市「国勢調査基準人口世帯数」
和歌山市「和歌山市地域公共交通計画」
和歌山市「宿泊客数が過去最高を更新!2年連続100万人突破 欧州からの宿泊客数が過去最高を更新」
和歌山市「公共施設マネジメント」
和歌山市「和歌山都市計画の変更」
和歌山市「和歌山駅まち空間活性化事業」
和歌山市「今後の水道事業及び水道料金について」
和歌山市「令和8年度予算と主要事業の概要」
和歌山市「令和8年度当初予算に係る市長記者会見」

関連記事