和歌山県は、空き家が多い県です。
令和5年住宅・土地統計調査ベースでは、和歌山県の空き家率は21.2%。徳島県と並んで全国で最も高い水準とされています。空き家数は10万5,300戸。住宅の約5戸に1戸が空き家という数字だけを見ると、かなり重い状況です。
ただし、ここで雑に「空き家が多いなら、安く住める家もたくさんある」と考えると、話を見誤ります。
和歌山県内の空き家約10万5千戸のうち、賃貸・売却用や別荘などを除いた「利用目的のない空き家」は約5万9千戸とされています。つまり、本当に問題になっているのは、すでに市場に出ている物件ではなく、使われず、貸されず、売られず、地域の中に眠っている住宅です。
空き家が多いことと、すぐに住める家が多いことは違います。
でも一方で、和歌山の空き家活用は止まっているわけでもありません。
空き家バンクの登録は増えている
和歌山県の空き家バンクでは、新規登録件数が伸びています。
2022年度は174件、2023年度は218件、2024年度は296件。3年連続で過去最多を更新しています。累計成約件数も、2025年8月時点で586件、2025年12月末時点では668件まで伸びているとされています。
もちろん、県内に10万戸を超える空き家があることを考えれば、これだけで「空き家問題が解決に向かっている」とは言えません。
むしろ見るべきなのは、別の点です。
和歌山では、放置されがちな空き家を少しずつ流通に乗せる仕組みが動き始めている。そう読むのが現実的です。
空き家は、持っているだけでは資源になりません。所有者が登録し、状態を確認し、使いたい人に届き、契約や改修の条件が整って、ようやく住まいになります。
その入口になっているのが、「わかやま住まいポータルサイト」です。
わかやま住まいポータルサイトは、空き家探しの入口になる
「わかやま住まいポータルサイト」は、和歌山県内の住まい探しを支援するサイトです。
特徴は、県の空き家バンク物件、市町村独自の空き家バンク物件、住宅協力員が扱う民間不動産物件を、ひとつの画面で探せることです。
地方で住まいを探そうとすると、よくあるのが「情報が散らばっている」問題です。県のページ、市町村のページ、不動産会社のページ、移住相談窓口の案内。あちこち見ているうちに、結局どこから問い合わせればいいのか分からなくなる。
その点、わかやま住まいポータルサイトは、検索の入口をまとめてくれます。
2026年6月22日時点の検索画面では、登録件数は357件。売買・賃貸、自治体、価格帯、家賃、間取り、築年数、平屋、農地あり、庭あり、駐車場あり、ペット可、海近、山近、川近、市街地、VR案内など、かなり細かく条件を絞れます。
これは地味ですが、移住希望者には大きいです。
「海に近い古家がいい」
「田舎暮らしはしたいけど、車が停められないと困る」
「安い売買物件を探したい」
「まずは賃貸で試したい」
そうした条件を、最初の段階で見比べられるからです。
ただし、ここで大事な注意点があります。
ポータルに載っているからといって、その物件を自治体が保証しているわけではありません。空き家バンク物件についても、自治体は契約に関与せず、物件そのものを保証するものではないとされています。
つまり、ポータルは「安心な物件棚」ではありません。
あくまで、探す人と空き家をつなぐ入口です。
田辺市の補助制度は魅力的。でも、軽い制度ではない
空き家活用を考えるうえで、補助制度も見逃せません。
たとえば田辺市には、「田辺市移住推進空き家活用事業補助金」があります。これは、県外から移住する人の居住に使う空き家の改修を支援する制度です。
県の空き家改修補助金は、改修費の2分の1、上限100万円。田辺市の上乗せ補助は、県補助金額を除いた額の2分の1、上限80万円とされています。
つまり、制度上は県100万円、市80万円という形で、最大180万円規模の支援につながる可能性があります。
これは大きいです。
古い住宅を住める状態にするには、屋根、床、壁、水回り、給排水、電気、残置物処分など、思った以上に費用がかかります。移住希望者にとって、改修費の一部を補助してもらえる制度は、初期負担を下げる材料になります。
ただし、ここでも「補助金があるから安心」とは言い切れません。
田辺市の制度では、対象地域、対象物件、県外からの移住、県内施工業者、事前申請などの条件があります。さらに重要なのは、事業完了後の翌年度から起算して10年間、改修した空き家に居住し、または県外からの移住者の居住用として活用しなければならない点です。
最大額より重いのは、この10年条件です。
短期で住んでみたい人、数年後に売却するかもしれない人、将来的に事業利用へ切り替えたい人には、簡単に使える制度ではありません。
補助制度はありがたい。でも、使い方を間違えると自由度を狭めます。
安い空き家ほど、見るべき場所が多い
和歌山県の空き家バンク成約を見ると、賃貸では5万円以内が多く、売買では200万円以内の価格帯が目立つとされています。
低価格の住宅が動いていることは、移住希望者にとって魅力です。都市部の住宅価格や家賃に疲れた人から見れば、和歌山の空き家はかなり現実的な選択肢に見えるかもしれません。
でも、安い物件ほど確認することは増えます。
特に見たいのは、次のような点です。
雨漏りはないか。
シロアリや腐朽はないか。
耐震性はどうか。
上下水道か、浄化槽か。
接道義務を満たしているか。
再建築できる土地か。
境界ははっきりしているか。
農地や山林、未登記の附属建物が付いていないか。
相続登記は済んでいるか。
残置物は誰が片付けるのか。
契約不適合責任はどう整理されるのか。
古い家は、見た目だけでは分かりません。
「ちょっと直せば住めそう」に見えても、屋根、床下、配管、電気、浄化槽、雨漏り、耐震まで見ると、改修費が一気に膨らむことがあります。
200万円の家が、総額200万円で住める家とは限りません。
これは冷たい話ではなく、むしろ大事な現実です。最初に確認しておけば、空き家は選択肢になります。確認しないまま買えば、安く買ったつもりが高くつくこともあります。
所有者にとっても、放置は楽ではない
空き家の話は、移住希望者だけの話ではありません。
和歌山で空き家を持っている人、相続した人、実家をどうするか悩んでいる人にとっても、かなり現実的な問題です。
空き家は、持っているだけでも管理が必要です。
草木の繁茂、雨漏り、台風被害、近隣からの苦情、家財の放置、固定資産税、相続登記。時間が経てば経つほど、整理しなければならないことは増えます。
特に相続登記は、2024年4月から義務化されています。名義が整理されていなければ、売ることも貸すことも、補助制度を使うことも難しくなります。
空き家バンクへの登録も、ただ「家があります」と言えば済むものではありません。
権利関係は整理されているか。
登記簿は確認できるか。
境界や接道に大きな問題はないか。
建物の状態は説明できるか。
家財をどう片付けるか。
売るのか、貸すのか、改修して使ってもらうのか。
ここを整えて、初めて空き家は誰かの住まいになる可能性が出てきます。
放置している間は、ただの負担です。
でも、条件を整理して流通に乗せれば、移住者や地域にとっての入口になります。
空き家はチャンス、では少し雑すぎる
和歌山の空き家を、「チャンス」とだけ呼ぶのは簡単です。
でも、それは少し雑です。
空き家率21.2%という数字は、地域にとって重い現実です。使われない住宅が増えれば、景観、防災、防犯、地域コミュニティにも影響します。
一方で、空き家バンクの登録は増え、成約件数も伸びています。わかやま住まいポータルサイトのように、県・市町村・民間の物件情報をまとめて探せる入口もあります。田辺市のように、移住者向けの改修補助を用意している自治体もあります。
つまり、和歌山の空き家は、単なる衰退の象徴ではありません。
ただし、夢の古民家市場でもありません。
低価格で、築年数が古く、改修や確認が必要な住宅を、制度と相談窓口と不動産実務で少しずつ動かしていく。いま和歌山で起きているのは、そういう地味だけれど重要な流れです。
空き家は、放置すれば負動産になります。
でも、権利関係を整え、建物の状態を確認し、補助制度や相談窓口をうまく使えば、移住や二拠点生活、地域の新しい住まい方の入口にもなります。
和歌山の空き家問題は、すぐに解決する話ではありません。
それでも、ただ増えていくだけの問題として見るより、「どうすれば使える住まいに戻せるのか」という視点で見た方が、少しだけ前向きです。
空き家だらけの和歌山で成約が増えている理由は、空き家が勝手に魅力的になったからではありません。
探す人に届く仕組みを作り、所有者に登録を促し、補助制度で改修の負担を下げ、使える物件から少しずつ動かしているからです。
空き家は、置いておけば負担。
整えれば、誰かの入口。
和歌山の住まいを考えるなら、この両方を見ておきたいところです。
参考情報
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
和歌山県「令和5年住宅・土地統計調査 基本集計結果の概要」
和歌山県「2024年度空き家バンク登録数が過去最高を更新」
和歌山県空家等対策推進協議会資料(第18回資料、第19回資料)
わかやま住まいポータルサイト、住まいを探す、支援制度、FAQ
田辺市「田辺市移住推進空き家活用事業補助金」
法務省「相続登記の申請義務化について」
国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」